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こんにちわ♪

こんにちわ♪

ニッポンの暮らし方♪







日本獣医持代


タンザニアから帰国して。

自分の未熟さを身にしみて実感していた俺は。

まずは技術力をもっとあげようと思っていた。

実はタンザニアへ行く前に、とある動物病院からオファーがかかっていたんだ。

非常にありがたい事だった。


そこの院長は、僕の大先輩にあたる人で。


タンザニアで完全に原始人と化していた俺を暖かく迎え入れてくれた。


最初は大変だったよ。


まず日本語がうまく話せなかった。


ずっとスワヒリ語だけで生活をしていたから、日本語を忘れてしまっていたんだ。




更に、信じられない事に。


人間、ずっとそういった行動をしていないとそれすらわからなくなるという事も気がついた。普通の日本人だったら『そんなこと当たり前でしょ!』ってな行動が俺にはできなかったんだ。


例えば、掃除機を使う時。掃除機というもの自体は知っていたし、使い方も把握していたんだけど。

電源を入れるという事がわからなくなっていた(笑)。

そう、スイッチって何?状態だったのだ。



まずね、日本に到着した瞬間からもうものすごい逆カルチャーショックだったからね。


成田からまず電車に乗る。その前にエスカレーターがある。うまく乗れない。

電車の中で、なにやらみんな小さなものを持ってひそひそと会話をしている。


俺がタンザニアに行く前は、まだ携帯電話がそんなに普及していなかったんだ。


ほぉ、今日本じゃ、トランシーバーが流行っているのか、なんて大バカな事を考えていた(大笑)。


友達に連れられて、新宿へ行く。

なんと携帯電話『0円』で売っているじゃないかっ。(いやいや0円では売ってない)

そのとき俺の取った行動。100個買ってタンザニアに送ってやろう。0円だし。

バカですね。

もちろん、すぐに俺の行動は阻止されましたけど。




更に、帰国しばらくは日本語に不自由していたけれども、それよりも何より。


日本人の顔が区別つかなかった(汗)。

特に女の子。

みんな茶髪で、おんなじ様なかっこうしてるし。

確かにみんなきれいに見えるんだけど、誰が誰なのかしばらくの間区別できなかった。

そう、それは日本人から見てアフリカ黒人の顔がなかなか判別できないかのように。その逆現象が自分におきていた。



信じられます?でも俺ってばそういう人間だったんだよ。



そんな原始人が日本社会に復帰する事はたやすい事ではなかった。

『ブッシュマンニューヨークへ行く』ってな映画が昔あったような気がするけど、まさにそれなんだよ。まぁせいぜい良くても『クロコダイルダンディ』みたいな感じだ。

だからず~っと、俺は逃げ出したかった。

今では、だいぶおさまったけど。ず~っと俺はタンザニアへ帰りたいと思っていたんだ。



でも俺は逃げ出さなかった。

何よりも、自分の技術を向上させたかったからだ。

ここで逃げ出せば、俺は苦悩から解放される代わりに、以後ずっと原始人として暮らさねばならない。


アフリカで暮らすなら容易い事だけど、日本国籍の持ち主の俺には、アフリカへ戻る事すら難しいんだ。


俺の勤めていた動物病院は、一応外科を売り物にしている(らしいです)。


院長は、そんな原始人に対して、根気よく、優しく、いろいろと、しかも一から教えてくれた。



そして、原始人でもがんばれば、ちゃんと現代人になれて。

しかも、高等な手術すらも一応ぎこちなくでもこなせるようになれた。

しかもコンピューターというしろものまで使いこなせるようになったじゃないかっ。


『なせばなる。なさねばならぬ、何事も。』



手術

写真は、そんな俺の手術場面。

助手に入ってくれているのは、俺の大学時代の同期で、今大学で講師をしている、『白い巨塔』で言うところの将来の財前教授だ。(あくまで将来のね)

あまり同業者との付き合いが少ない中で、大学の時からいまだに連絡を絶やさないでいてくれる友人の一人だ。

彼は博士号を持っている。そう博士なんですよ。

博士は、ずっと研究畑にいたからこうした臨床(現場仕事)をほとんど知らない。

だからよく、病院に研修と言いながら遊びに来ていた。



原始人の助手をしてくれているそんな博士。

う~ん、なんとも形容しがたい不思議な光景だ。

手術をされている患畜は、麻酔をかけられ寝ているからいいものを。これを理解できていたら、どう思う事だろう。




近代医術を身につけた元原始人。

臨床初心者のポスト財前教授。

でもどちらもいちおう獣医なんですよっ。


元原始人でも、がんばればこんな近代的な医療技術をぎりぎりだけれども、身に付けれるという事がこれによって検証されたわけだ。

たぶん、院長はそれを学会で発表しようと思っているんじゃないんだろうか?


それでも、日本の動物病院で働いていた期間は俺にとって貴重な時だった。


今でも院長には感謝したい。俺の恩人です。
















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